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脳を理解すれば、英語力は無理なく伸びる

脳を理解すれば、英語力は無理なく伸びる

 私たちは、脳がコンピューターと同じようなものだと考えがちですが、実際には全く異なる情報処理を行っています。ですから、脳を単純なマシーンだと考えると、とんでもなく遠回りで効果の出にくい学習を行うことになります。逆に、脳の働き方をよく理解すると、最小のストレスで、高い効果を実現できます。

 今回はこの点にフォーカスし、脳に合った英語の学習法について考えてみたいと思います。

ポイント1 7割主義で行く

 脳は、ある意味でいい加減、ある意味で融通の利くシステムで、指示されたことを指示された通りに行うコンピューターとは異質な働き方をします。また、そんな“緩いシステム”が作ったわけですから、言葉も精密には出来ていません。
例外があったり、文法的に説明できない点が多々ありますし、時とともに変化したりもします。英語が苦手、英語が嫌いという人の中には、この曖昧さに嫌気が差した(=疲れを覚えた)人も多いかも知れません(※)。

(※)文法理論には、主なものでも4~5種類あり、今でも様々な研究が続けられています。それだけ言葉は複雑なものなのです。

 脳は、いわば「7割マシーン」で、10割の学習も出来ないことはないですが、目的意識や、好き嫌い、体調、さらには気分によって、つねにそのパフォーマンスは揺らいでいます。ですので、あまりに“完璧”を求め過ぎると、学習効果は上がるどころか、著しく低下します。

 言葉の学習については特にそうです。ですので、英語の学習においても、まずこの点を理解して、「取りあえず7割出来ればOKだよ」と、脳に話しかけるような気持ちで取り組むようにすることが大切です。そのようにすると、心身がリラックスして効果が上がりやすくなります。

 また、脳を「7割マシーン」だと考えると、「3割程度はミスをして当たり前」という事にもなりますので、会話などでも英語を話しやすくなります(※)。

(※)実際、脳はミスを繰り返しながら学んでいくように出来ています。ミスを通じて知識や経験を積み上げることで、色々な引き出しができ、状況に応じた柔軟な判断が出来るようになるからです。人間が臨機応変に、また創造的に言葉を使うことができるのは、脳にこのような性質があるからです。

ポイント2 脳は勝手に学習をしてくれる

 次に大切な点は、つねに緊張して、「覚えないといけない」「忘れちゃいけない」「理解しないといけない」と考える必要はないという点です。なぜなら、取りあえず7割程度の精度でインプットを行うと、脳がそれを勝手に整理して9割~10割のレベルにまでまとめてくれるからです。

 この点については、7割程度の「ゆる~~い復習」を、「適切な時間」を置いて繰り返すとはっきりと実感できます。復習するまでの間、特に勉強していなくても、なぜか記憶が定着していたり、理解が進んでいたりするからです。

 なぜこのようなことが起こるかと言うと、(いい加減なはずの)脳が、実は意外に真面目で、私たちが勉強をしていないときにも、学んだ情報をせっせと休みなく整理してくれるからです。

 あなたにも、書籍やテキストなどで、初めは難しいと思っていたことが、時間が経って見直すとなぜか易しく思えたという経験があるはずです。この種明かしは、「脳が勝手に学習を進めてくれた」なのです。このようなことが起こるのは、脳では多数のCPU(ニューロン)が複雑につながり合い、協力し合って作業しているため、学習を終えた後も、情報のやり取りがしばらくの間続くからです。つまり、情報処理の完了までに時間がかかるからなのです(※)。

(※)よく、3カ月間も集中して勉強したのにTOEICのスコアが上がらないといった話を聞きますが、これも同じ理由で、個人差がありますが、学習が成果として表に現れるまでには、通常2~4カ月程度はかかります。この点が理解できていないと、無闇に焦ることになり、悪循環に陥ります。

 記憶についても、「忘れまい」と頑張るのは逆効果になります。なぜなら、それはせっかく受け取った情報を整理し、定着させようとしている脳の邪魔をすることになるからです。脳を信頼し、「忘れるものは忘れるに任せる」というようにすると、かえって記憶が定着しやすくなります。

 普段、私たちは追われるように勉強することが多く、脳にもプレッシャーをかけがちですが、少し“間”を置いて、ゆるやかな目で見てやるようにすると、脳は意外な潜在力を発揮します。これは少し嬉しい体験で、「もう少しやってみるか…」という動機にもつながります。

 ここで気になる点は、復習のタイミングとして「適切な時間」がいつかという事ですが、これは脳と“相談して”決めます。相談というとややこしそうですが、ようは「自然にやる気が起こるかどうか」で判断すれば良いのです。

 よく、記憶は●●日後に失われていくので、●●日ごとに復習と行うと良いといったことが言われますが、事はそう単純ではありません。脳が情報を扱う仕組みは極めて複雑だからです(※)。

(※)脳が言葉を処理する能力に関しては、以前は特定の部位が働くと考えられていましたが、現在では多数の部位が複雑に関わっている事が分かっています。言葉が人間の思考や感情に深く関わっている事を考えると、これは当然だといえるでしょう。私が、英語を学習する際に、母語である日本語を有効に活用するべきだと考えるのはこのためで、リッスントークなど、英語関連の教材を作る際には脳の働き方に細心の注意を払います。

 ではどのように復習すれば良いかというと、例えば、一度学習したテキストが7冊あるとすると、それらをパラパラとめくったり、音声を聞いてみたりして、「これならもう一度やってもいいかな…」とか「お、これはもう一度やってみたい」と感じるものをそのタイミングで復習すれば良いのです。なぜなら、このように思えるということは、脳内で以前に学習した内容が整理し終わっているという事だからです(※)。

(※)やる気の起こるのが、テキストの第3章だけという場合もありますが、そのときにはそこだけをやるようにします。“脳の気分”に逆らうのはご法度です。

 ちなみに、いつまで経っても全くやる気の出ないテキストというものが必ずあります。そのような場合にはどうすれば良いのでしょうか――迷わず捨てて下さい。少なくともいくらかは学習したわけですから、完全な無駄にはなりません。脳が好まないものを無理やり押し付けると、疲弊するだけで、効果は上がりません。やる気の出ないテキストはどんどんと捨て、新しいものを試してみて下さい。どんな発見があるか分かりませんし、もし相性の良いものに出会うことができると、それは“宝”を発見したようなもので、色々な意味で必ず大きなプラスになります。

 もちろん、何度も復習したくなるテキストは、心行くまで使いこなして下さい。すべては、脳との“相談”であり、あなたの感覚・感性の問題です(※)。

(※)本連載の第6回で紹介した「遊びながら学ぶ極意」の彼女は、自分の感覚にしたがって、気の向くままに学習をしたわけですが、じつは、最高の学習テクニックを実践していたという訳です。
ポイント3 脳をだます

 脳は気ままです。コンピューターなら一度プログラムを起動すると“一心不乱”に作業をしてくれますが、脳はそうはいきません。というか、脳の中はつねに雑念が浮かんでは消えているという状態で、なかなかこちらの思うようには集中してくれません。ではどうすれば良いでしょうか。

 ――答えは「脳をだます」です。

 あまり良い言葉ではありませんが、相手が気ままな以上、こちらもそれなりの工夫をする必要があります。脳をだますには大きく3つの方法があります(※)。

(※)ひとつの鉄則として、日本語を巧みに使うとそれだけで脳はだまされやすい状態になるという点を押さえておいて下さい。これはコラムの中でこれまでに何度も指摘してきた点です。

●1つ目 脳が喜ぶことに英語を結び付ける

 これは、気まぐれな脳をコントロールする最良の方法です。例えば、脳が好む洋画や洋楽を素材に使うと、たとえ、英語にたいして「嫌だ」という気持ちがあっても、一種の錯覚を起こし、英語を学習してくれます。このとき、積極的に日本語字幕や和訳を利用して、「ほら、こうすると意味が大体のところ分かるじゃないか。どうと言うことは無いよ」と、“説得する”ようにすると、抵抗感がさらに薄くなって、脳は上機嫌で学習してくれます。

 また、どうせだますなら、ついでに洋画や洋楽の中でも、?なるべく短く平易で、すぐに使えるセリフが入っているもの、1.セリフの多いもの(=無言のシーンが少ないもの)、2.スラングが少ないもの――を使うようにしましょう。心は熱く、頭はクールに。心が動かないと学習は効果を上げにくいのですが、そこはやはり現実的であることも大切で、“クールに脳をだます”というわけです。

●2つ目 脳の隙を突く

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