新しい『TOEIC』で変更される点は?
2016年5月のテストより、『TOEIC』が10年ぶりに大刷新することをご存知ですか?
新しい『TOEIC』は、「使える英語」を試すことに重点を置き、出題傾向もかなり変わります。
受験生は、変更点を知りそれに適した対策を取ることが必要です。
約1万人に英語の指導をし、『Storyで覚える! TOEICテスト エッセンシャル英単語』の著者でもある山内勇樹氏が、『新・TOEIC』の傾向と対策を、そしてTOEICは受験しないけれど英語力を上げたいという人にも役立つポイントを3回にわけてお伝えします。
意味を持たない単語を入れ、実際に近い会話に
新・TOEICでは、変更される点がいくつもありますが、突き詰めると2つの点に集約されます
より「自然な英語」と「実践的な英語」の追求です。
では、「自然な英語」を盛り込んだ例をみてみましょう。
たとえば、日常、私たちが行っている会話には、「あー」「えーっと」「んー」というようなあまり意味を持たない「間投詞」が自然に入りますよね。
英会話でも同じです。
これまでの出題ではこうした会話で生じる間投詞などを削除してリスニングの吹き込みをしていましたが、新・TOEICではあえて入れ込んできます。
【旧】Maybe the station is next to a hospital. (たぶん、その駅は病院のとなりです)
【新】Maybe the station is next to hummm… a hospital. (たぶん、その駅は、えーーと、病院のとなりです)
「何だったかな~?」と記憶をたどりながら話しているときなどは、このような間投詞が通常入るものです。
また、言い間違いをしたとき、言葉を探しているときも、言い直したり詰まったりするもの。
そんな実際の自然な会話に近い形になります。
チャット形式の会話の内容を問う出題も
「実践的な英語」についても例を見てみましょう。
Terry (15:20)
I’ll get there 10 min earlier than we said.
Makiko (15:25) Read
Oh, you too? Same here.
Terry (15:25)
Then we can meet at 15:50 in front of the ticket gate.
Makiko (15:27) Read
Sounds good. There’s a clock tower,
so I’ll see you there.
Terry (15:30)
Gotcha! See you soon.
What time were Terry and Makiko initially planning to meet?
(A) At 15:20
(B) At 15:30
(C) At 15:50
(D) At 16:00
実際に出るであろう問題形式を簡略化し、私がオリジナルで作成したものですが、このような「チャット形式」の問題も出題されるようになります。
これまでのTOEIC問題でも、Eメールのやり取りを題材とした長文問題などが出題されていましたが、われわれの現在の生活において増えてきた、このようなテキストメッセージ、チャット形式によるコミュニケーションも出題されるようになります。
上記の問題の会話の訳は以下のとおりです。
テリー:10分早く着きそうだ。
マキコ:私も。
テリー:じゃあ15:50に改札前で会えるね。
マキコ:時計台の下で会いましょう。
テリー:了解! じゃああとで。
最後のテリーの 「Gotcha!」 は(実践的な)口語表現で 「了解」くらいの意味です。
そして問題は「もともと何時に会う予定だったのか?」。
正解は (D) の16:00となります。
チャットという形式のうえでも、話全体の流れがわかっていなければ解けないという全体解釈という観点からも「実践的」になっています。
このように、さまざまな角度から「より実践的な問題」が出題されるようになるのが、新・TOEICです。
何種類ものニュアンスのある単語を読み取る
新・TOEICであっても、これまでと同じようにスコア向上のために「単語力」がダントツで重要であるという事実は変わりません。
リスニング問題であれ、リーディング問題であれ、当然、わからない単語があればあるほど英文の理解が不正確になります。
すべての根底である単語力こそ根本的なスコアの大枠を決める最重要項目です。
新・TOEICで必要となる単語力は、これまでの単語力とは少し質が変わっています。
単純にその英単語の意味を知っていれば解ける問題のほかに、そうではないタイプのものも出題されるようになるのです。
たとえば、新・TOEICでは、ある英単語や英語表現の“意味”“意図”を問う問題が出題されます。
たとえば日本語でも「やばい」と言ったときに、「ものすごくよい」という意味か、「本当に状況が悪い」という意味で使われているのかは、場合によって違います。
「信じられない」という言葉も、状況によっては「(信じられないくらい)すばらしい」という意味にもなりますし、別の状況では「本当にそんなことってあるの?」という使い方もあります。
また、「信用できない」という意味でも使います。
F:Masato proposed to me. M:That’s unbelievable. What wonderful news!
Why does the man say “unbelievable”?
(A) He cannot trust the woman.
(B) He does not think it really happened.
(C) He was glad to hear the news.
(D) He heard that Masato is a wonderful man.
(日本語訳)
女性:マサトからプロポーズされたの
男性:That’s unbelievable、やったね!
なぜ男性は “That’s unbelievable” と言ったのでしょうか?
(A) 彼はその女性を信頼していないから。
(B) 彼はそれが実際に起こったとは思っていないから。
(C) 彼はその知らせを聞いてうれしく感じたから。
(D) 彼はマサトがすばらしい人間だと聞いたから。
このような問題が新・TOEICでは出題されます。
実際に unbelievable(信じられない)は状況によってさまざまな解釈を許します。
今回は、What wonderful news!(やったね)の部分で状況的に喜んでいる様子が出ているので、(C) 彼はその知らせを聞いてうれしく感じたから、が正解となります。
unbelievable = 信じられない、と単語の定義を覚えるだけでは、実践としては不十分。
意味を知った上で、その単語がどのように使われているかを理解する必要があるのです。
このように、新・TOEICでは表面的ではなく、実践的な語彙力がより求められるようになります。
単なる語訳ではなく単語の“本質”をつかむ
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